野田ちほのOfficial Web Magazine

Vol.2 かけがえのない“おばあちゃん”のピアノ

 

おばあちゃんと私の思い出をつなぐピアノが、一瞬にして崩れてしまった。

 

それは阪神淡路大震災である。

祖父母の家は倒壊しておばあちゃんは亡くなってしまった。

私が憧れていたおばあちゃんのピアノも、ぺちゃんこに壊れてしまった。

 

そんななかでも奇跡がおきた。おばあちゃんのピアノがよみがえったのだ。

 

ヤマハ震災支援チームが壊れたピアノをきれいに修復してくれて憧れのおばあちゃんの

ブラウンのピアノが我が家にやってきた。

ヤマハの担当者からも、「少し傷は残ったけれど、このような素晴らしいピアノを

修復できて嬉しかった。大切にしてください」といったメッセージがあったと

記憶している。

 

「私が弾けなくなったら、いつかあなたにあげるわ」とおばあちゃんの言葉が

記憶とともに聞こえてくるようで、涙が溢れた。

 

あぁ、おばあちゃんは私との約束をちゃんと守ってくれたんだな。

 

40年と長く続けているピアノだけれど、練習もあまりしないし、上手なわけでもない。

なのにピアノはやめられない。

 

8歳の時に東京に引っ越したため、おばあちゃんとは 頻繁に会ったり、長い時間を

一緒に過ごしたりできなかった。 でも、ピアノの存在があってピアノを弾くとなんだか

天国にいるおばあちゃんとの つながりを感じ、いつも温かく見守ってくれている気がする。

今も私のデスクの後ろにはおばあちゃんのピアノがあり、生涯大切にしてゆきたい。

 

ピアノを弾く時間がなかなかとれない日々だが、また少しずつでも弾こう。

ピアノの鍵盤蓋をあけるまでがとても億劫なのだが、いったん鍵盤に指を躍らせると

演奏は楽しく心のゆとりがうまれ、音を奏でる喜びに溢れる。

少し心の余裕ができた今、もっともっと味わっていきたい。

 

私自身、思い出を少し紐解いてみると、さまざまな記憶が溢れ、大切にしているものに

守られている温かい気持ちに包まれました。

きっと、みなさんも思い出に残る大切なものがあると思います。

 

ほっと一息している時間に、大切にしているものを

心に思い浮かべてみてはいかがでしょうか。

記憶がやさしくよみがえり、ふと微笑ましくなったり、目頭が熱くなったり……。

かけがえのない時間ですね。

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